2025年7月、日本国内においてSNS運用の専門機関が発表した「2025年上半期SNSトレンド分析」。その核となった動向は、まさに“三つのR”だった――個性(Rawness)、熱量(Radiance)、そしてリアル(Realness)。以下では、この三原則を軸に、これからのSNS発信がどのように進化しつつあるかを深掘りし、具体的な施策や企業・個人が取り入れるべき戦略をまとめています。
▶︎ 1.“個性”が光る投稿が選ばれる時代へ
かつては「万人向け」「鉄板ジャンル」がウケの王道だったSNS発信。しかし2025年上半期は、“独特な声”や“自分語り”に支持が集まったことが明確になりました。たとえば以下の投稿タイプが多数のリアクションを獲得:
- マイナー趣味を情熱的に語る動画(例:古い文房具レビュー、昭和歌謡の解説)
- 自分の失敗談をネタにしたライブ配信(例:料理で大失敗して笑いに変える)
- 嗜好に偏りがあるけれど“語れる感”があるニッチジャンルの切り口
これらに共通していたのは「無理に万人受けを狙っていない」「自分ごととして語っている」こと。まさに“届く”発信の条件として、今後のSNS設計に欠かせない要素です。
▶︎ 2.“熱量”が見る人を巻き込む推進力
“熱を感じる投稿”こそが、エンゲージメントを引き寄せる原動力となっています。シンプルな「告知」「紹介」から一歩進んで、“心の熱さ”を伝える投稿が急増しているのです。たとえば…
- 小さな成功体験を歓喜とともに報告するストーリーズ
- イベント開催に向けた準備風景を“がむしゃら感”たっぷりで配信
- 新商品開発の裏側をスタッフの熱意とともに連載投稿
このような“背後に人がいて動いている”という感触が、結果としてフォローやいいね、そしてコメントという形で返ってくることも多くなりました。
▶︎ 3.“リアル”が新しい信頼のカタチ
虚飾をそぎ落としたリアルな投稿に、「現実感」を強く覚えるユーザーが支持する傾向が強くなっています。特に…
- フィルターを外した素顔ショット
- 感情むき出しのストーリーテリング
- 暮らしの裏側や失敗もセットで見せるありのまま系投稿
こうした“飾らない等身大”の表現は、フォロワーとの心理的な距離をぐっと縮め、いわゆる“信頼感”という形で返ってくるのです。
▶︎ 4.三原則はなぜ“刺さる”のか?
この三要素が共通して生み出すのは、「共感経由の巻き込み」です。次のような連鎖が起きています:
- 個性ある切り口が目に留まり、まず“興味”が惹かれる
- 熱量ある語りが次の“関心”を引き寄せ、メッセージ受け取り力が高まる
- リアルな表現が最終的に“信頼”を築き、深い心象記憶になる
この流れが、平均的な投稿よりも高いリーチや保存率、コメント率につながり、アルゴリズムに好評価される傾向も確認されています。
▶︎ 5.事例から学ぶ実践パターン
A. インフルエンサーの“ぶっちゃけ旅ブログ”
あるインフルエンサーは、旅先での“失敗あるある”を赤裸々に語る投稿が連続バズ。
「水着忘れた」「電車乗り過ごし」「宿で虫が出た」などのネタが、個性・熱量・リアルを同時に満たして受け入れられました。
B. 地方ブランドの“作り手の物語”発信
ブランドでは、「朝早く収穫した野菜を子どもと一緒に料理する」「失敗した試作品の笑い話」など、背景ストーリーと人間味を加味。
これによりフォロワーが深く共感し、「この人から買いたい」という感覚が醸成されました。
C. アーティストの“未完成ライブ配信”
絵描きやものづくり系クリエイターが、ライブで試行錯誤している様子をリアルタイム配信。
作品は未完成でも、プロセスそのものが魅せ場となり“共感参加型”コンテンツに進化しました。
▶︎ 6.実践ステップ:三原則を自分ゴト化するには?
- **自分の“ウリ”と“弱み”**を棚卸し。弱さこそ個性になり得る。
- 熱く語れる1 topic=マイクロテーマを設け、自己語りのネタを蓄積。
- 素の自分を見せる投稿設計:準備中の写真、背景のチラ見せ、未完成感…少しの“隙”が信頼につながる。
- 反応のデータ化:どんな投稿に共感反応が集まったか記録し、次の投稿へ活かす。
▶︎ 7.今こそ刷新!企業・ブランドにも訪れる潮目の変化
従来の“キレイな広告投稿”だけでは届かない時代。バズのある企業公式SNSでは、以下の工夫が目立っています:
- 社員インタビュー風のリアルな現場共有
- 「ありのまま」を定期発信する企画(例:#社員の朝ルーティン)
- 小さくて“本気の試み”を見せる:アイデア裏側や試作失敗談など
これによりフォロワーの心に“人間味”を刺し、ブランドへの親愛度を高める動きが進行中です。
▶︎ 8.三原則とこれからのSNS設計
これからのSNS発信に求められるのは、以下の観点だと考えられます:
- メッセージ軸:マスに向けた整えた姿より、自分の声をちゃんと届けること
- 定期運用:無理なく発信できるテーマ(週1回の“リアル報告”)などルール化
- エンゲージメント重視:「共感」「会話」「反応」が集まる体制・クロージングワードを設置
▶︎ 9.まとめ:今こそ“三原則”を武器に
2025年上半期のSNSトレンドは、「ありのままの自分で熱をもって語る」投稿が強く支持されるという明快な方程式を浮き彫りにしました。
マスに迎合しない個性、真に込められた熱量、そして嘘のないリアルが、反応を呼び、共感を生み、継続フォローへとつながっていきます。
今後もSNSは、テクノロジーではなく“人間味”が主役の舞台。従来の“整っただけの情報”に頼るのではなく、“あなた自身”を武器にした発信設計を意識することが、2025年秋以降さらに重要になっていくでしょう。